• NandemoFM/NandemoFM Converter を v1.20 にアップデートしました。

MSXのサウンドをなんでもFM音源で鳴らしてみよう

前回作った NandemoSCC に続いて、NandemoFM というものを作ってみました。


どういうものかというと、FM音源非対応のMSXアプリケーションのサウンドを、無理やりFM音源(MSX-MUSIC/FM-PAC。以下『OPLL』と呼ぶ)で鳴らしてしまおう、というものです。

※イースシリーズの動画については、NandemoFMのエンジン部分のみを使用しています。詳細は 改造しよう[イースシリーズ] を参照してください。

無理やりFM音源で鳴らす仕組み

挙動はNandemoSCCに近いのですが、実はかなり複雑なことをやっています。

PSGのサウンドレジスタに出力している値をそのまま使えるSCCと違って、FM音源（OPLL）は、出力されるデータや発音の仕組みがPSGとは全く異なるからです。

大きな課題は、以下の２つでした。


1. キーオン（音が鳴り始める）とキーオフ（音を消す）のタイミングを検知しなければならない
2. 音の周波数をOPLL用データに変換するための計算式がPSGとは全く違うため、随時変換しなければならない

まず、1.ですが、条件として、前のフレームから大きく（およそ半音以上）周波数が変化した場合に、キーオンとみなすことにしました。 ボリューム固定のまま「ドレミファソ」と演奏される場合は、音が切り替わるタイミングでキーオンを発生することになります。 あまり細かく検知してしまうと、ビブラートを使うとキーオンだらけになってしまうので、およそ半音以上変わった場合にしてみました。

ただ、これだけだと同じ音を連続して鳴らすことができないので、もう一つの条件として、 前のフレームのボリュームと、今のフレームのボリュームを比較し、大きくなった場合はキーオン、ゼロになった場合はキーオフとしました。 例えば、「0→15→13→11→9→8→13→12→11→…」となった場合、最初の「15」と二回目の「13」のところでキーオンとみなします。 また、ハードウェアエンベロープを使っている場合は、PSGレジスタ13に何か値が出力されるタイミングをキーオンとしました。

割込みを使って1/60秒でプログラムを回し続けて、1フレーム前のレジスタの値を保存しておくことで、これらの処理を行っています。


続いて 2.ですが、これは少し面倒でした。

PSGやSCCの場合、サウンドレジスタに出力するデータと、鳴らしたい周波数の間には、以下の関係が成り立ちます。


周波数 = 111860.78125 / PSGデータ


また、OPLLの場合は、出力データと鳴らしたい周波数の間には以下の関係が成り立ちます。


OPLLデータ = ( 周波数 × (2^18) / (50*1000) ) / (2^b)

(2^b)で割っていますが、これは基本値をオクターブによってシフトしているだけなので、一旦置いておきます。

この２つの式から、PSGデータからOPLLデータを計算する式は、以下のようになります。


OPLLデータ = 586472.6528 / PSGデータ


つまり、毎フレームPSGレジスタを監視し、この計算式で変換した値をOPLLレジスタに出力すれば良い、ということになります。

最初はMSXのMath-Packライブラリを使っていたのですが、速度的に遅すぎたこともあって、 精度は妥協して、16ビット整数どうしの割り算で計算を行うことにしました。

OPLLデータ = ( 36655 / PSGデータ ) * 16



この計算を、毎フレーム、チャンネルごとに行っています。
どうしても誤差が出てしまいますが、プログラムのサイズや速度のことも考えると、個人的には十分かなーと思います。

ツールとか

NandemoFM / NandemoFM Converter v1.20

ダウンロードはこちら →NandemoFM_120.zip 2015/8/13 update!

更新履歴
• PSGをノイズのみ鳴らせるようにしました(v1.20)
• ドライバーを任意のアドレスに置けるようにしました(v1.20)
• ディスクからブートする際、引数を与えることでオートスタートできるようにしました(v1.20)




NandemoFMを使って市販タイトルをFM音源で楽しむ





NandemoFMの動作環境

• RAM64K以上の、MSX、MSX2、MSX2+、MSXturboR上で動作します（RAM32KB以下のMSXでは動作しません）
• MSX2以降のアプリケーションをFM音源でプレイする場合は turboR が必須です



NandemoFMの使い方

ディスク版（MSX-DOS版）

ダウンロードファイルの中の forMSXフォルダにある、NANDEMOFM.dsk がディスクイメージになります。
ドライブAに入れてMSX-DOSを起動した後、コマンドラインで

FMBOOT

と入力すると起動します。
ツールが起動したら、ROMカートリッジを後差しして（自己責任）、"BOOT"の設定を"ROM"に、"BOOT SLOT"を差したROMのスロットに変更してSPACEを押せば、FM音源でアプリケーションが楽しめます。

また、32KB以内のROMイメージファイルであれば、

FMBOOT <ROMイメージファイル>

とすることで、指定したROMイメージファイルをディスクからロードし、RAM上に配置した状態で、ツールを起動することもできます。


※ v1.20より、スタートアップ時のパラメータと、オートスタートの指定ができるようになりました。new!

FMBOOT <ROMイメージファイル> /設定文字列

「設定文字列」は、14文字からなる文字列で、NandemoFMの各設定を文字列化しただけのものです。
コマンドラインから "FMBOOT /" と入力すると、ヘルプが表示されるので、参考にしてください。






ROM版

ダウンロードファイルの中の FMBOOT.ROM が、NandemoFMのROMイメージになります。エミュレーターでは、このROMイメージをスロット１にセットしてください。
（ただし、openMSXはROMイメージのサイズを8KBちょうどにする必要があるので、バイナリーエディタなどでダミーデータを加えてサイズを調整してください）

実機で動作させる場合、FMBOOT.ROM を Mega Flash ROM SCC などにそのまま焼いて、スロット１にセットしてください。

そして、FM音源でプレイしたいROMをスロット２にセットして、SHIFTキーを押しながら MSXを起動してください。



各項目について

NandemoFM の各項目について説明します。カーソルキーの上下で項目を選択し、左右でパラメーターを変更できます。
パラメーターの設定が終了したら、スペースキーでROMをブートします。
turboR専用機能については【tR】と記述してあります。

FM chA～chC … OPLLの各チャンネルの音色を選択します。内蔵音色のみ指定できます。デフォルトは [7] のトランペットになっています。
• [ 1] … バイオリン
  
• [ 2] … ギター
  
• [ 3] … ピアノ
  
• [ 4] … フルート
  
• [ 5] … クラリネット
  
• [ 6] … オーボエ
  
• [ 7] … トランペット
  
• [ 8] … オルガン
  
• [ 9] … ホルン
  
• [10] … シンセ
  
• [11] … ハープシコード
  
• [12] … ビブラフォン
  
• [13] … シンセベース
  
• [14] … ウッドベース
  
• [15] … エレキベース
  

FM VOLUME … FM音源のボリュームの増分を指定します。PSGと同じボリュームでFM音源を発音した場合、どうしても音が小さくなりがちなので、ここで調整してください。
• NORMAL … アプリケーション側がPSGに出力したそのままのボリュームでFM音源を鳴らします。
• +1～+14 … アプリケーション側がPSGに出力したボリュームに、一定値を加算してFM音源を鳴らします。

PSG VOLUME … PSGのボリュームの減算値を指定します。
• MAX … アプリケーション側が指定したそのままのボリュームでPSGを鳴らします。
• -1～-14 … アプリケーション側が指定したボリュームから、一定値を減算してPSGを鳴らします。
• MUTE … PSGは鳴らさず、FM音源のみになります。ノイズ系はすべて鳴らなくなります。

PSG NOISE … PSGのノイズの制御を指定します。new!
• NORMAL … ノイズ用チャンネルでも特別な処理を行わず、PSG VOLUME等の設定に従って発音します。
• FORCE ON … ノイズ用チャンネルは、PSG VOLUMEの設定に関わらず必ず発音します。

OPLL DATA … OPLLにデータを出力する方法の設定です。
• SET BY BIOS(0093H) … BIOSの0093Hを書き換えて、アプリケーション側がPSGに出力しようとした値からOPLLデータを作成します。 BIOSを使ってPSGを鳴らしているタイトルに有効です。
• COPY FROM PSG … PSGレジスタの内容を直接監視して、OPLLデータを作成します。 BIOSを使わずにPSGを鳴らしているタイトルはこちらを使ってください。ただし、この設定にした場合、PSG VOLUMEの値は無視されます。

BIOS … どのBIOSを使用するかの設定です。
• NORMAL … 通常のBIOSを使用します。（デバッグ用。無意味です）
• CUSTOM[PAGE0] … BIOSのPAGE0(0000H-3FFFH)を裏RAMにコピーして、0038Hの割り込みフックおよび 0093HのPSG出力用BIOSを書き換えます。
• CUSTOM[DRAM]【tR】 … 書き換えたBIOSを、マッパーRAMのDRAMモード用セグメントに配置します。turboRはこちらを使ってください。
  
  ※MSX2用のタイトルは64KBのRAMをフルに使っているものが多く、PAGE0が破壊されてしまうため、事実上、turboRのDRAMモード以外では動作しません。
  

BOOT … ブート時の設定です。
• RAM(ROMイメージファイル) … 4000HからのRAMをそのままROMデータとみなして、RAM上で起動します。事前にRAM上にROMイメージが置かれていないと、どうなるかわかりません。
  
• ROM … スロットに差してあるROMを起動します。
  
• REBOOT【tR】…各種設定を有効にしたまま、MSXをリブートします。
  

BOOT SLOT … BOOTするスロットを指定します。"BOOT"の設定が"RAM"の場合はRAMのスロット、"ROM"の場合はROMのスロットを選択してください。
• 基本スロットの場合は00H～03H、拡張スロットの場合は80H～8FHで指定してください。

CPU … CPUの設定です。
• Z80 … Z80モードで起動します。
  
• R800【tR】 … 強制的にR800モードで起動します。ただし、OPLLのアクセスタイミングが変わってしまうため、実機ではFM音源が正しく鳴りません。
  

PRG ADDR … FM演奏ルーチンを配置するアドレスを指定します。
• C000 … RAMが8KBでも動作するタイトルであれば、この設定で動くと思います。
  
• D000 … RAMが8KBでも動作するタイトルであれば、この設定で動くと思います。
  
• E000 …
  
• F000 …
  
• F41F … KBUF（クランチバッファ）～BUF（タイプした文字が入るバッファ）を使用します。RAMが16KB以上必要なタイトルはこの設定を試してください。
  
• F931 … デフォルトです。CIRCLEおよびPLAY文が使うワークエリアを使用します。RAMが16KB以上必要なタイトルはこの設定を試してください。
  
  ※ v1.20より、任意のアドレスに配置できるようになりました。PRG ADDR にカーソルを合わせて RETURN を押すと、自由なアドレスが指定できます。

OPLL SLOT … OPLL(FM-PAC/内蔵音源)が搭載されたROMのスロットを指定します。基本的にはツール側でサーチするので指定する必要はありません。
• 基本スロットの場合は00H～03H、拡張スロットの場合は80H～8FHで指定してください。

PRESET SETTING … 利用頻度が高い設定をプリセットとして準備しておきました。[1]～[4]までのキーを押すと、それぞれの設定に切り替わります。

• [1]RAM /CUSTOM BIOS[PAGE0] … 32KBROMまで（ただしMSX1用アプリケーションのみ）
• [2]MEGAROM/CUSTOM BIOS[PAGE0] … MEGAROM可（ただしMSX1用アプリケーションのみ）
• [3]RAM /CUSTOM BIOS[DRAM]【tR】 … 32KBROMまで
• [4]MEGAROM/CUSTOM BIOS[DRAM]【tR】 … MEGAROM可



クイックスタートガイド

簡単な使い方を動画で説明してみました。





NandemoFM Converterを使ってFM音源対応ROMイメージを作成する


NandemoFM Converter は、ROMイメージファイルを、FM音源変換プログラムを組み込んだROMに変換するツールです。
このツールで変換したROMイメージファイルは、NandemoFMを起動しなくても、 MegaFlashROMなどに焼けば単独で実機動作させることができますし、そのままエミュレーターでロードすることもできます。

ダウンロードファイルの「forPC」フォルダにある FMCONV.exe というツールを起動してください。



実行するとウィンドウが開くので、各種設定をした後、ROMイメージファイルをドラッグ＆ドロップしてください。 Original ROM type 変換前のROMのタイプを指定してください。 Normal … メガROM以外（マッパー非搭載）の場合はこれを選択してください。 Megarom (KONAMI) … コナミのメガROMタイトルはこれを選択してください。 Megarom (KONAMI with SCC) … コナミのSCC搭載メガROMタイトルはこれを選択してください（ただし、FM音源化する意味はほとんどないですが…）。 Megarom (ASCII8 Mapper) … コナミ以外のメガROMタイトルの多くはこのタイプになります。 Megarom (ASCII16 Mapper) … 一部のメガROMタイトルで使われています。ASCII8で動作しない場合はこちらを試してみてください。 ※メガROMのタイプが分からない場合は、nf_banさん の Gigamix Online を参考にされると良いかと思います。 BANK1 control NandemoFMConverterは、起動時に実行される4000HからのROMデータ(BANK1)を書き換えており、FM音源の設定終了後、別のBANKに移動したオリジナルのデータに戻しています。 BANK1を切り替えるアプリケーションはそれほど多くはないのですが、切り替えが発生した場合は正常に動作しなくなってしまうので、それを回避するための設定です。 No change … BANK1の切り替えを行っていないタイトルはこれを選択してください Fixed to 4000H … BANK1が4000Hのみに配置されるタイトルはこれを選択してください。 Care for all address … BANK1がすべてのアドレスに配置される可能性があるタイトルはこれを選択してください。ただし処理が重くなります。 ※よくわからないと思うので、最初は No change で、もし動かなければ順に試してみてください Auto Start このチェックをONにすると、ここで設定した値が反映された状態でアプリケーションが起動します。 （OFFにすると、起動時に毎回NandemoFMの設定画面が表示されます） 内容については、NandemoFMと同じなので、そちらの説明を参照してください。 ※SHIFTを押しながら起動すると、Auto StartをONにした状態で作成したROMでも設定画面を出すことができます



変換後のファイル名は、例えば「DRACULA.ROM」は、「DRACULA_FM.ROM」になります。
また、変換後のROMイメージファイルは、元のROMとは違うROMタイプになることがあります（変更があった場合、変換後のメッセージボックスに表示されます）。

実行する際の注意事項です。
• オリジナルのROMよりも、8KB～16KBサイズが増えます。
• MegaFlashROMに焼く際は、"/A8" "/K5" など、変換後のROMタイプに対応したオプションをつけてください。
• blueMSXでは、ROMイメージファイルをSLOTにセットする際に、ROMタイプを "ASCII 8" や "Konami SCC" など、変換後のものにしてください。
• openMSXでは、[CartA]→[Select cartridge type]で、"Ascii 8kB" や "Konami with SCC" など、変換後のROMタイプを選択してください。

一時は挫折しそうになったNandemoFMですが、なんとかそれなりに動くものにはなりました。

実は、簡単なリバーブ機能やリズム音源制御なんかもテストしてみたのですが、 プログラムサイズが大きくなってしまうと常駐できなくなってしまいますし、処理も重くなってしまうということで、今回は断念しました。
いつか余裕ができたら、処理は度外視でやってみたい気も…？

原理的には、NandemoMIDIやNandemoOPMなんかもできるのかもしれませんが、それを楽しめる環境の人は少ないと思いますし、 「MSXっぽい」という意味では、今回のOPLL対応が一番「MSXっぽい」のかな、と思います。

そんな感じで、2015年の夏休みの課題は、ちょっと早めに終了です。

また何か面白そうなことがあったらチャレンジしてみます(^_^)

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